研究概要

当部門では、超高磁場MRIを用いた次世代イメージング手法や解析手法の確立、脳神経・精神疾患の病態解明に取り組んでおります。これまでの研究成果は以下の通りです。

 

  1. 脳神経・精神疾患における脳形態解析とそのシステム化、及び高次脳機能・病態の解明(1) 0.4テスラ低磁場および1.5テスラMRI装置においてVBM手法および全脳ROI解析による検討を行い、全脳各領域の体積値に平均10%程度の差があることを明らかにした。
    (2) 早期プリオン病におけるMRI拡散異常域の経時的変化に関する客観的評価法の検討において、アーチファクトの強い前頭葉眼窩面および側頭葉下面の影響を排除した拡散異常域の定量化手法を開発した。
    (3) 独自に開発した大脳白質病変自動定量化プログラムをパッケージ化し、国内企業にライセンスアウトした。
    (4) クラウドプラットフォームを利用した大脳白質病変の自動解析環境のフィージビリティスタディを開始し、11施設のサンプルデータの解析を完了した。
  2. 次世代拡散・磁化率MRIを用いた脳・心・精神疾患の早期診断・鑑別診断・脳微細構造変化の検出(1) 拡散尖度イメージングと定量的磁化率マッピングの解析技術を企業と共同開発し、発症早期のパーキンソン症候群における基底核と脳幹の早期微細構造変化の検出に成功した。感度と特異度はともに80%以上であり、高精度の早期鑑別診断が可能であることを明らかにした。
    (2) 拡散尖度イメージングと定量的磁化率マッピングを用いて、筋萎縮性側索硬化症における錐体路と中心前回の微細構造変化の検出に成功した。両者の組み合わせは、感度と特異度ともに80%以上であり、高精度の画像診断が可能であることを明らかにした。
    (3) 拡散尖度イメージングを用いて、小脳失調症における脳幹と小脳の微細構造変化の検出に成功した。特に、MSA-Cと他の脊髄小脳変性症(SCA/SAOA)の鑑別診断能は、感度と特異度ともに80%以上であり、高精度の鑑別診断が可能であることを明らかにした。
    (4) 拡散尖度イメージングを用いて、体外循環による心大血管手術後の一過性大脳白質微細障害を検出可能であることを明らかにした。
    (5) 拡散尖度イメージングを用いて、ミニマル肝性脳症における大脳白質および基底核の微細構造変化を検出可能であることを明らかにした。ミニマル肝性脳症と非ミニマル肝性脳症の鑑別診断は、感度・特異度ともに80%以上であり、高精度の画像診断が可能であることを明らかにした。
    (6) 拡散尖度イメージングを用いて、産後うつ患者において大脳白質に微細構造変化が生じていることを明らかにした。
    (7) 拡散尖度イメージングを用いて、機能性消化管障害患者において大脳白質に微細構造変化が生じていることを明らかにした。
  3. 高解像度MR angiographyを用いた脳血管解析(1) 7テスラMRIによる超高解像度のMR血管撮像法(MRA)の開発や最適化した磁化移動パルスを適用することにより、従来描出不可能であった超微細血管の描出を可能とした。
    (2) 急性期脳梗塞患者に対する7テスラ高解像度MRAからレンズ核線条体動脈(LSA)を含む脳血管形状を構築し、数値流体力学(CFD)解析に成功した。
    (3) 7テスラ高解像度MRAのCFD解析によって、LSA領域の急性期非心原性脳梗塞患者における患側LSAの壁剪断応力(WSS)と壁剪断応力の勾配(WSSG)は、健側に比べて低値を示すことが明らかにした。また、LSA領域以外の脳梗塞患者におけるLSAのCFD指標(WSS/WSSG)は患側と対側で有意な差は見られなかった。
    (4) Leptomeningeal anastomosis (LMA)は従来のMRIでは捉えることが困難であったが、7テスラ高解像度MRAによって慢性脳虚血患者におけるLMAの半定量的評価を可能とした。
    (5) 7テスラ高解像度MRAにおけるLMAの発達の程度から、重症脳虚血の有無を高い感度・特異度で推定できることを明らかにした。
    (6) 3テスラ高解像度MRAの脳動脈瘤のCFD解析によって、一般的に元画像として用いられるCTAによる破裂に関連するCFD指標を比較し、WSSとWSSGはCTAとよい一致率と相関がみられ、3T MRAは脳動脈瘤に対するCFD解析に適用可能であることを明らかにした。
  4. MRIによる脳循環代謝解析(1) 定量的磁化率マッピング(QSM)の解析技術の開発を行った。また、3テスラ・7テスラのQSMを用いたOEF画像の作成に成功し、血行力学的脳虚血患者においてPETのOEF画像と高い相関があることを明らかにした。
    (2) Intravoxel incoherent motion(IVIM)の自動解析ソフトウェアを企業と共同開発し、脳血液量(CBV)を反映する灌流割合(perfusion fraction)の算出を可能とした。また、血行力学的脳虚血患者におけるperfusion fractionとSPECTによる血管反応性との間に有意な相関関係があることを明らかにした。
  5. 機能的MRI技術の確立と応用(1) 7テスラMRIにおける手の把握運動時と安静時のEPI画像から、脳代謝予備能を算出する基礎データ計測した。
    (2) 7テスラMRIのコイル感度ムラの機能的MRI(fMRI)画像解析への影響を、感度ムラ補正を行い補正することを目指した。
    (3) ヒトの高次脳機能である共感とミラーニューロンの関係について、fMRI を用いて他者間コミュニケーション観察時のミラーニューロンシステムの解明を目指した。また,ミラーニューロン活動は他者と自己を同一視したときのみに起こることを示した。
  6. 多チャンネルラジオ波送信技術による局所送信磁場分布の改善技術の確立(1) 世界で初めて導入された商用8チャンネルラジオ波送信システムの基礎データを取得し解析した。
    (2) 7テスラMRIでは呼吸による静磁場変動が多チャンネルラジオ波送信技術による局所送信磁場分布に影響を与えることを確認し、較正スキャンを呼吸停止下に行うことで局所送信磁場分布の均一性ならびに再現性が改善することを報告した。また呼吸による磁場変動の影響を受けにくい較正スキャンの手法を開発して報告した。