7T機能動態イメージングプロジェクト
装置紹介
7 Tesla MRI
【7.0 Tesla MRI (Discovery MR950, GE Healthcare)】
当施設では、本邦2台目となる超高磁場7 Tesla MRI装置が導入され、本格稼働に向けて現在鋭意準備中となっています。7 Tesla MRIの最大の特徴は、従来の1.5 Teslaや3 Tesla MRIと比較して空間分解能や信号雑音比が格段に高い画像が撮像できる点にあります。これにより、数百μm程度の超高解像度で形態イメージングや機能イメージングが可能となり、位相イメージング、脳血管・血管壁イメージング、髄鞘イメージング、テンソルイメージングなどを確立でき、脳神経精神疾患の病態解明や早期発見に大きく寄与することが期待されます。この他にも、7 Tesla MRIは脳循環代謝イメージングや高精度MRS、高分解能functional MRI、高分解能分子イメージング、多核種動態イメージングなど、様々な次世代技術の応用が可能であり、多くの国内外の大学・研究機関と共同研究を進める予定となっています。
多光子励起顕微鏡
【Zeiss LSM510 META NLO 走査型レーザー顕微鏡】
エネルギーの小さい長波長の光子が2つ以上、瞬間に、蛍光発生物質の存在する同一空間に飛び込む状態をつくり出し、蛍光を放出させるのが「多光子励起」と呼ばれる手法です。効率的に多光子励起を起こさせるため、通常、光源はフェムト秒超短パルスの高出力ポンプ・レーザーが用いられています。
多光子励起では焦点面でのみ励起が起こるので、焦点面以外に存在する蛍光発光物をほとんど励起しません。このことは、検体に対して「蛍光色素の退色」を防ぐ効果が期待できます。また低いレーザー強度で深層部を効率良く励起出来れば、フォトダメージを低減させ、深部の細胞の動きを長時間観察することも可能となります。
我々の施設では、Spectra-Physics Mai Tai Ti:sapphire laserを装備したZeiss LSM510 META NLO 走査型レーザー顕微鏡を保有しています。これまで、我々は血管内皮細胞が特異的にEGFPを産生するトランスジェニック・ゼブラフィッシュの胚を用いて脈管形成過程の詳細を追ってきました。世界に先駆けてリンパ管の形成過程を明らかにすることもできました。今後は脳の脈管形成の研究を進めていく予定です。
クライオセクショニングシステム
【型式:EM-UC6 / EM-FC6 LEICA社製】
透過電子顕微鏡用の超薄切片は通常樹脂包埋されたブロックから切削します。本装置では、樹脂包埋することなく、言い換えれば、脱水・包埋することなく、急速に凍結した組織を、-120℃に冷却したチャンバー内で、直接透過電子顕微鏡で観察可能な厚さ(70~90nm)に超薄切することができます。カメラシステムを備えており、多人数を対象にした本手法の技術指導・実習を行うことができます。
本方法により得られた凍結・超薄切片は、免疫組織化学に最適で、金コロイド標識法を用いて、ナノレベルでの分子局在の解析が可能です(図1、図2)。
図1: Astrocyte に分布するGLAST (C), Synapse に分布する mGluR1 (D), Axon 内に分布するneurofilament protein (E) [J Neurosci Methods 153: 2. 276-282, 2006]
図2: 中枢神経のミエリンループに分布するtransmembrane sialylglycoprotein, opalin分子の局在(A-C) [J Biol Chem 283: 30. 20830-20840, 2008]
急速凍結装置
【型式:HIF-4K 日立計測器サービス社製】
水を含んだ生物試料を、液体ヘリウム温度(-260℃)に冷却したメタルブロックに圧着し、超短時間で急速凍結固定を行ないます。凍結置換法あるいは凍結超薄切法との併用により、生理時に近い電子顕微鏡レベルでの形態解析が可能です(図3)。
図3: 液体ヘリウムによる急速凍結法で得られた小脳皮質の電顕像